SDGsのロゴを知っている人の数は年々多くなってきています。今回の記事では「知っている」から少し掘り下げてSDGsの考え方、アプローチ、目指す世界を実務者目線からできるだけ分かりやすく説明したいと思います。
SDGsの考え方
SDGsの考え方の基本は、”未来の世代のニーズを満たす能力を奪わない形で現在の世代のニーズを満たしていこう”というものです。
具体的に説明すると、海にいる魚を獲れば私たちはお金を稼ぎ、経済発展することが出来ます。でも私たちの世代が魚を獲りつくし絶滅させてしまったら、次の世代は漁業という経済発展の手段がなくなってしいます。
こういう自分勝手な発展の仕方ではなく、次の世代も私たちと同じように漁業ができるよう、魚を獲る量を制限したり、増やす努力をしたりして持続可能な形でやっていこうというのが持続可能な開発(Sustainable Development)の考え方です。
SDGsのアプローチ
SDGsは2つのアプローチから構成されています。1つ目は「世界の複雑な現状を理解する」こと、2つ目は「複雑な現状に対し解決策を提示する」ことです。病気を患っている患者を医者が診察し、処方箋を出すイメージを持ってみると分かりやすいとかもしれません。
世界の複雑な現状を理解する時に、SDGsは1) 経済、2)社会, 3) 環境、4) 政治(ガバナンス)という視点を重要視します。
人々が豊かになるためには経済発展が必要です。しかし、経済が良ければオッケーという訳ではありません。平均的に豊かな国でも富が一部の人々に集中していて、その他大勢は貧しい、という状況はSDGsの目指す世界ではありません。
一極集中ではなく、人種、性別、宗教、地域など幅広く富が分配されている状態(social inclusion)がSDGsの目指す世界です。また、先ほどの魚の例でも分かるように、自然環境を持続可能に利用しなければなりません。
そして、最後に政府がこうした方針を支持していることが大切です。政府の信頼が低かったり、汚職が蔓延したり、公共サービスが一部の人にのみ提供されたり、社会保障が弱かったり、透明性が無かったり、一部の人々が人種や性別、宗教や出身地域により優遇したり差別したりするする政府の下では多くの人々は幸せにはなれないので、政府の行政方針、ガバナンスは大切なポイントです。
こうした世界の複雑な状況を分析した結果出された処方箋が17のSDGsです。世界を繁栄させ、公平に、持続可能に環境を利用し、子供や孫の世代に今ある地球を損なわずに受け継いでいくために達成すべき17の目標が示されています。
SDGsは目標の数が17と多く分かりにくいロゴという印象を持つ人も多いかもしれません。しかし世界はそれだけ複雑な問題に直面しています。その状況ときちんと向き合い、次の世代の為に抜かりなくアクションを起こすには、その複雑性を受け入れないといけないのです。
多くの問題を抱えている人類と地球の状況を改善するため、世界の国々を共通の17の方向に集中させたという意味でSDGsの意義はとても大きいと私は思います。
SDGsの目指すところは?
こうしたSDGsの目指す世界に現在近い位置にあるのが北欧諸国(ノルウェー、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、アイスランド)です。こうした国々は税金が高く、公的サービスや社会保障が手厚いのが特徴です。
現在の世界の富の分配状況を見てみると、富裕層上位10%が富の76%を、上位50%が98%を所有し、下位50%は2%しか所有していません。この格差社会はSDGsが目指しているものとは大分離れています。税金は富裕層から富を回収し、貧困層に再分配する手段なので、北欧諸国は格差是正に積極的な国と言えます。
逆に世界で最も強い経済力を持つアメリカは、弱肉強食で経済格差が大きく、社会的弱者の保護が弱いので、SDGsが目指す世界ではありません。
ちなみに、OECDが出している下のグラフでは、縦軸は人生の質(健康,ワークライフバランス,社会の繋がり,安全,自然環境 等)、横軸は物質的豊かさ(収入,富,仕事,住居 等)を示しています。
米国は物質面ではとても裕福だが人生の質は低めとなります。他方、北欧諸国は物質的豊かさはそこまで高くなくとも、人生の質は高いと分析されています。これがSDGsが目指す世界の方向です。