
世界では食料が足りていないの?

食料の生産量を見ると世界の人々にとって十分な量が生産されているけど、いろいろな理由でそれが行きわたっていないんだよ。
世界では全ての人々が十分に食べるだけの食料はは生産されてる反面、世界の人口の35%は栄養不足の状態にあります。
内8億人(10%)は栄養不足[1]、そして20億人(25%)は隠れ飢餓(Hidden hunger)といわれる状態にあります[2]。
前者は一日に必要なカロリーを摂取できていない状態。後者は摂取カロリー自体は足りているものの、健康や成長に必要なビタミンやミネラル等が足りていない状態です。
35%と聞くとあなたはどんな印象を持ちますか?多い?少ない?大体そんなもの?
2020年の世界の人口は78億人と推定されているので[3]、35%というと、約28億人です。
その反面、太りすぎ(過体重)とされる人は19億人(24%)、それよりも程度の進んだ肥満の人は6億5千万人(8%)います[4]
種別 | 人口 | 世界人口の割合 |
栄養不足 | 8億人 | 10% |
隠れ飢餓 (hidden hunger) | 20億人 | 25% |
太りすぎ(過体重) | 19億人 | 24% |
肥満 | 6.5億人 | 8% |
合計 | 53.5億人 | 68% |
今回の記事ではこうした食料、栄養問題の現状と対策を深堀したいと思います。

この記事を読むと
・世界の栄養不足の現状とどの地域が深刻か、これからどの地域が深刻になっていくかが分かる。
・隠れた飢餓(Hidden Hunger)の定義と人体への影響、世界のどれくらいの人々がこの状態にあるかが分かる。
・太りすぎ(過体重)と肥満の定義、人体への影響、世界のどの地域、どの所得帯でこの問題が深刻なのかが分かる。
・こうした問題に対する対策の概要と今後重点的に対策が必要な地域が分かる。
それでは早速見ていきましょう。
栄養不足
世界の人口の約10%(8億人)が栄養不足です[5]。これは一日に必要なカロリーを十分に取れていないことを意味します。
地理的に見るとサブサハラアフリカが最も深刻で、南アジアや中南米が続いていることがわかります。北アジアでは北朝鮮が唯一赤く表示されています。
2000年以降の栄養不足な状態にある人口の推移を見てみると全体的に減少傾向にあったものの、最近になり悪化していることが分かります。
主な原因は経済の低迷(例:価格の高騰や購買力の低下)と気候変動の影響(例:降雨パターンの変化や気温の上昇、自然災害による不作)、紛争(例:食料サプライチェーンの崩壊、人々の難民、国内避難民化)と分析されています[6][7]。
また、Covid-19がもたらした経済への打撃が栄養不足に陥るか陥らないかの瀬戸際にあった人々を食糧危機に陥れたとの報告もあります[8]。
隠れた飢餓(hidden hunger)
次に隠れた飢餓(hidden hunger)という概念を紹介します。
これはカロリー的には一日に必要な量を摂取できているものの、健康維持や体の成長にとても重要なビタミン、ミネラル、脂肪酸などの栄養素が足りていない状態を指します[9]。国連食糧計画(FAO)はこうした状態にある人が20億人いると推定しています[10]。
例えばヨウ素が不足すると倦怠感と脱力感、記憶力と学習障害、赤ちゃんの脳の発達障害や、妊娠中の問題(流産、死産 等のリスク増加[11])、生理不順などにつながります[12]。
鉄分が不足すると貧血になり、貧血は全身倦怠感、動悸や息切れ、食欲不振、肺や心臓への負担につながります[13]。
また、ビタミンAや亜鉛が不足すると視覚障害、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなります[14]。
過体重、肥満
最後に紹介するのが太りすぎと肥満です。
2016年には世界の19億人が太りすぎで(過体重)、内6億5千万人が肥満でした[15]。肥満、過体重はBMIでカテゴリー分けをすることができ、BMI 25-30を過体重、BMI 30以上を肥満とします[16]。
カロリーの取りすぎ、肥満は心臓病や変形性関節症、糖尿病、癌にも繋がります[17]。2017年に世界で亡くなった人の8%は肥満が原因によるものでした[18]。
肥満の状態にある人は1975年から2016年の間に3倍に増加しており、今後も増加していくことが予想されています[19]。
下の地図を見てみると、世界で最も開発が遅れているサブサハラアフリカと南アジアでは比較的過体重、肥満の人の割合が20%程度と少ないのに対し、北米、北アフリカと中東、オーストラリア等では割合が60%以上に上っていることが分かります[20]。
また、所得別に見ると全てのカテゴリーで過体重と肥満が増加傾向にあり、高所得国と中高所得国で割合が多くなっていることが分かります[21]。
どんな対策が必要なのか
栄養不足、隠れた飢餓(hidden hunger)のある地域では食料をより多く生産できるよう灌漑等のインフラ整備、暑さや過酷な自然環境でも育つ改良された農作物品種を取り入れていくことで状況を改善させていくことが必要です。
また、紛争が飢餓の大きな原因の1つですから、紛争が起こりやすい地域の平和構築と安定も重要です。
加えて、収穫後のサプライチェーンが弱いことで多くのフードロスが発生しているので良質な倉庫や冷蔵倉庫の設置も大切です。
食料価格の高騰を抑えるような経済対策も必要です。
また、過体重と肥満については肥満の危険性やどういう食事や食習慣が良くどういう食事や食習慣が悪いのかという正しい知識を人々が持つことが大切である一方、本人の意思ではコントロールが難しい社会的な要因に目を向けることも重要だという指摘もあります。
例えば肥満はメンタルヘルス、その人が住む社会環境、医療へのアクセスの有無、超加工食品の過剰摂取によっても引き起こされます[22]。
最後に、2020年の世界の人口は約78億人ですが、2050年までに97億人に増加するものと予測されています[23]。
地域別の出産件数を見てみると約50%がアジアで減少傾向にあるものの最も大きな割合を占めています[24]。第二位がアフリカで約30%でこちらは増加傾向にあります[25]。
世界で最も開発が遅れている地域第一位がサブサハラアフリカ、次いで南アジアであることを考えると、食糧危機にさらされる人々の数は対策が取られなければ増えていくことが予想されます。
今回の記事が皆さんのお役に立てば幸いです。これから数本は食料問題とSDGsに関連した記事を書いていきたいと思います。気づいたことや感想があればコメントでシェアしてくださいね。
参考文献
[1] Our World in Data Population, 10,000 BCE to 2021 (ourworldindata.org)
[2] The Millennium Project. Special Studies – Hidden Hunger: Unhealthy Food Markets in the Developing World – The Millennium Project (millennium-project.org)
[3] Our World in Data Population, 10,000 BCE to 2021 (ourworldindata.org)
[4] WHO (2021). Obesity and overweight.
[5] United Nations (2021). Goal 2 | Department of Economic and Social Affairs (un.org)
[6] World Economic Forum (2020). Global hunger is rising, warns major UN report | World Economic Forum: (weforum.org)
[7] Action Against Hunger World Hunger: Key Facts and Statistics 2022 | Action Against Hunger
[8] Oxfam (2020). The Hunger Virus: How COVID-19 is fuelling hunger in a hungry world (openrepository.com)
[9] FAO (2014). VIDEO: What is hidden hunger? | FAO
[10] The Millennium Project. Special Studies – Hidden Hunger: Unhealthy Food Markets in the Developing World – The Millennium Project (millennium-project.org)
[11] 内閣府 (2017): 食品安全総合情報システム
[12] Ahelth.com (2022). ヨウ素欠乏症の症状..感染の10の重要な兆候と危険因子 – the health (ahelth.com)
[13] Omron (2016). 放っておくと恐ろしい貧血|オムロン ヘルスケア (omron.co.jp)
[14] Global Hunger Index. Chapter 3: Addressing the Challenge of Hidden Hunger (ifpri.org)
[15] WHO (2021). Obesity and overweight.
[16] Our World in Data. Obesity
[17] WHO (2021). Obesity and overweight.
[18] Our World in Data. Obesity
[19] ibid
[20] ibid
[21] ibid
[22] 保健指導リソースガイド. 世界肥満デー 肥満者の努力だけではコントロールできない 誤解や偏見に”思いやり”で対策
[24] Our World in Data (2019): World Population Growth
[25] ibid
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