プライマリーコース海外研修中の印象に残っている出張3選

プライマリーコース

今回は外務省平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業プライマリーコースの海外研修中の印象に残っている出張について紹介したいと思います。

はじめに

これは私がアフリカ・エチオピアのUNDP事務所(首都)で勤務していた時の経験を基に書きました。海外研修中の業務出張の一例としてご覧ください。

背景として、当時私はエチオピア、ケニア、ソマリアの国境間協力を促進させるEUのプロジェクトに配属されていました。

国境地帯は主要都市に比べて雇用、教育、セキュリティが乏しく、行政サービスを受ける機会が少ないことから現地コミュニティは政府に反感を持ちやすいです。

また、テロリストの温床になりやすいのも国境地帯の特徴です。例えばA国とB国にまたがる国境地帯にテロリストがいた場合、A国側の警察や軍に追われた場合B国側に逃げればA国は追ってこれません。

こうした条件が揃うと反政府勢力が構成員をリクルートメントしやすい環境ができあがります。

政府に対して反感を抱いている、教育や仕事の機会は乏しくお金が無い、政府は頼れない、近くに反政府組織がいて安全でない。それならば反政府勢力に入った方が家族を食べさせられるし、彼らの仲間になってしまえばセキュリテイ面でもまだ安心。という心理が働くことがあります。

また、エチオピア、ケニア、ソマリアの国境地帯には国境をまたぐ自然資源があります。

例えば湖、河川、牧草地です。トゥルカナ湖と呼ばれる湖は上流側はエチオピア、下流側はケニアに位置しています。エチオピア側がトゥルカナ湖に流れ込む川にダムを3つ建設したことから、湖の水量が減るのではと懸念されています。

もともとこの地域は乾燥地帯です。気候変動の影響でこうした湖、河川、牧草地は以前に比べ容量が減ってしまいました。水量、水位が下がり、牧草地の面積も少なくなってきています。

漁業、牧畜で生計を立てる多くの人々がこの地域に暮らしており、彼らは部族単位で生活しています。

生きていくために少なくなった資源を巡って時に部族間衝突が発生します。別の部族の家畜を略奪することも頻繁におこります。衝突が起きると部族としては報復しなければならず、報復が報復を招く負の連鎖が発生します。

やられたらそれと同じ程度かそれ以上やり返してやろうというのが人情なので、こうした負の連鎖は繰り返すたびに規模が大きくなる傾向があります。本来であればこうした事態にならないためにガバナンスがあります。

警察が抑止力をきかせ、もし略奪行為が起こった場合は法が裁き、犯罪者は罰せられ、被害者は裁判等公的なルールで決められた範囲内で補償を受け取り、その結果恨みが薄まり報復が起きる可能性が下がります。

しかし、この地域(アフリカの角)の国境地帯ではガバナンスが機能していないので、人々は私刑という手段を取ることになります。

アフリカの角で仮に大規模な衝突が発生した場合難民が発生し、その一部はヨーロッパに流入する可能性があり、EUとしては避けたい事態です。

したがって、EUはこの地域の安定化に向けた支援プロジェクトを行うわけです。エチオピア、ケニア、ソマリアの三カ国がそれぞれの国境間で協力を促進することで国境間の自然資源を持続可能に利用できるようにし、難民が出ないようにしようというのが狙いです。

背景説明が長くなりましたが、印象に残っている出張の紹介に進みましょう!

国境地域でのフィールド事務所立ち上げ

一番チャレンジングで且つ達成感があったのはエチオピア、ケニア、ソマリアの国境地帯のマンデラ・トライアングルという地域にフィールド事務所を立ち上げるミッションでした。

©Interpeace 2019

外務省の危険情報でもレベル4が目前に迫る地域です。定期航空便は無いので国連食糧計画(WFP)の運航するUN Humanitarian Air Service (UNHAS)に乗っての移動。

現地政府や地域政府の職員と合同で出張し、物件調査、物流調査、セキュリティ調査を行い事務所設立可能性の有無を判断しました。

この地域にはUNDPがそもそもなかったので動員できる全てのネットワークを駆使し現地にプレゼンスのあるWFP, IOM, UNHCR, NGOの現地スタッフの協力を得て調査を行うことができました。

その後なんとか事務所立ち上げまで漕ぎつけたタイミングで離任となりました。

©WFP 2018

3カ国の政府高官を招いたステアリング・コミッティー

これも大変でしたがやりがいのある仕事でした。このプロジェクトは国境にまたがる自然資源を扱うという非常にポリティカルなプロジェクトだったので三か国の政府の協力が欠かせません。

ステアリング・コミッティーというのはプロジェクトの進行方向を決める役員会のようなもので、ステークホルダーとUNDPが一緒になってプロジェクトの進捗レビュー、必要であれば軌道修正を行います。

この会議はケニアのナイロビで行いましたが、エチオピア、ケニア、ソマリアの関係省庁の高官を招いて実施しました。企画、ロジ準備、司会進行を担当させて頂きましたが、この規模の会議をアレンジした経験は無くプレッシャーで肋間神経痛になりながら準備しました笑

ソマリアからの参加者の航空運賃がこちらの手落ちで未払いだったためモガディシュ-ナイロビ間の飛行機に乗ることができず、彼がチケットカウンターから電話をかけてきた時は正直終わったとおもいましたが、幸い優しい人で後日笑って許してくれました。詰めの甘さを猛省すると共にいまとなっては良い思い出です。

現地警察の警護付きで陸路を移動

これはエチオピアとケニアの国境にあるモヤレという地域のフィールド事務所に出張した時の話です。

道中にアルカイダの影響が及ぶ地域を通るということで武装した警察が乗った車に先導してもらいました。

道中安全に移動できただけでなく、所々あるチェックポイントもこうしたエスコートがあるとスムーズです。お陰で無事に現地での会議と視察を行うことができました。

まとめ

プライマリーコース派遣中の身分は国連ボランティア(UNV)です。ボランティアというと責任や業務内容は軽いのかも?という印象があるかもしれませんが、実際はこの例で分かるようにそんなことはありません。

実際の業務内容や任せてもらえる責任はポジションや配属される事務所、上司によって異なりますが、特に私の配属先ではUNVの割合が多く、職員と同様に重い責任の仕事をこなしているUNVの同僚が多くいました。

一部の事務所は年々厳しくなる財政を正規職員に比べ人件費の安いUNVで補っています。これは今後国連の正規職員を目指す人々にとっては追い風なので、UNVをエントリーポイントとして考えるのは良い選択肢です。

仕事振りが認められるとより報酬の高いコンサルやJPOにも受かりやすくなりますよ。

 

コメント

  1. […] 3カ国の政府と協力してプロジェクトを行う、国境を跨ぐ天然資源の協力的利用を促進するという国連ならではの大きな規模の仕事に取り組むことができました。詳しくはこちらの記事で紹介しています。 […]

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